北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室&鞍馬研究室,2005年7月29日創設の防衛安全保障専門Weblog

世界大戦化を如何に回避するか?,カスピ海有事で顕在化する”アメリカイラン戦争””ロシアウクライナ戦争”の一体化

■二つの巨大戦争

世界大戦は如何に回避されるか。

世界大戦という単語をあえて使いましたが、ウクライナ軍はキエフへのロシア軍無人機攻撃及びミサイル攻撃に対処するとともに、カスピ海を航行する貨物船へ無人機攻撃を実施、ロシアが2023年頃から依存しているイラン製自爆用無人機海上輸送路に対して攻撃を加えました。イラン政府はこれに強く反発し、ウクライナへの攻撃を辞さない姿勢を示しました。

アメリカイラン戦争の長期化とともに、当初はホルムズ海峡機雷封鎖という状況が注視されましたが、機雷封鎖ではなく機雷と共に沿岸部からの無人機攻撃等が行われる状況で、アメリカ海軍でさえ船団護衛を行えない状況であり、ホルムズ海峡危機の当初想定であった、終戦後の機雷掃海、というものがまず前提として成り立たない状況となっています。

バベルマンデブ海峡封鎖、もう一つ7月に入り大きな危機となったのは、イエメンの武装勢力フーシ派が、イランに呼応し、海峡封鎖を発表し省線攻撃を実施、紅海を経て、アラビア半島の石油タンカーをアラビア海やインド洋に航行させる要衝が遮断される状況となっています。紅海は来たにスエズ運河がありますが、大型タンカーは航行に制限がある。

ここに、イランとロシアの輸送路を遮断しなければ、都市攻撃を防げない新しい問題が。ウクライナのゼレンスキー大統領は7月24日、カスピ海上で軍需物資を輸送していた複数の船舶と軍艦1隻に対して無人機攻撃を行ったと発表しました。ゼレンスキー大統領の発表によれば、この船はイランからロシアへ向かっていたものだとしています。

ロシア南部アストラハンの港からイラン北部のアンザリへ向かっていた2隻の船舶が攻撃を受けたとロシア政府は発表、ウクライナ政府は軍需物資を輸送する貨物線と護衛のミサイル艇を攻撃したと公表しましたが、イラン政府は鉄を輸送していたと発表しています。カスピ海船舶攻撃は2025年にもありましたが、今回はアメリカイラン戦争中です。

イランのシャヘド無人機がウクライナ攻撃に使用されている点について、イラン政府は、ロシアへ供給しておらず開戦前に少数を輸出したのみだと主張する一方、既に使用されている数は一か月間に5000機を超え、一万や二万という数ではなく、アメリカがイランを攻撃した数より多い、戦前の少数を輸出したのみというのは、流石に無理があります。

シャヘド無人機については、ロシアがイランの協力を受け国産化したゲラン無人機も含まれているため、すべてがイランから供給されたとは言い切れないものですが、イラン政府の、供与していないという説明にはいささか無理があり、イラン人口9240万という人口は、ロシア人口の1億4310万人には及ばないものの、生産力は大きいのです。

ロシアウクライナ戦争、懸念すべき点は、ここにアメリカイラン戦争と接点が生まれ、世界大戦へ発展する事です。現実問題として、イランから供給される無人機、そしてイランはファス360弾道弾、ゾルファガール弾道弾も供与されており、ウクライナとしては、自国に打ち込まれるミサイルや無人機を看過できない厳しい状況が在ることを理解しますが。

ウクライナ軍は自国製フラミンゴミサイルなどを以て、モスクワやサンクトペテルブルクへの攻撃に用いており、しかし対照的に、欧米が供与したミラージュ2000戦闘機やF-16戦闘機は、モスクワを攻撃圏内に収めているにもかかわらず、こうした地域への攻撃は自国製装備を用いるという、一種の節度、制限を行っている点に対し対照的です。

カスピ海での緊張はもう一つ、原油スワップ取引です。ロシアウクライナ戦争勃発とともに、ロシア産原油は経済制裁の対象となりましたが、カスピ海を経由してイランに供給、その供給された同量のイラン産原油をペルシャ湾からロシア決済で輸送するスワップ輸送が行われており、ロシアの継戦能力の観点から、ウクライナは遮断を注視してきました。

アメリカイラン戦争とロシアウクライナ戦争が、こうして繋がる懸念が顕在化しているのですが、先ず話し合え、とか簡単な問題ではありません、7月29日、今度はエジプトのダミエッタ港が国籍不明無人機いより攻撃され、アメリカ系企業が運行ずるLNGタンカーなど2隻が攻撃を受けた、アメリカイラン戦争開戦後、エジプトが攻撃されたのは初めて。

キエフへの無差別攻撃、ウクライナ軍は自国での戦闘とともに、ロシア軍死傷者は160万に達しているものの、権威主義国家では選挙での戦争終戦を望むのは難しく、そのままウクライナ侵攻が継続され、これに対してウクライナは石油関連施設攻撃などを行っていますが、ロシア政府に終戦交渉を受け入れさせるには足りていません。

世界大戦の危機、重要なのは、大規模戦争が複数重なった場合、停戦交渉が複雑化する、そして、黒海とカスピ海とホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡を結ぶ一つの線が複合的な戦争で包まれた場合、それは世界大戦と言わざるを得ない状況であり、この問題を、戦争を止める、簡単な命題をどのように具現化するか、瀬戸際の現実が突き付けられています。

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